WHAT’S HACKETT LONDON?

5人の識者が語る
いま、気になる英国ブランド
“ハケット ロンドン”とは?
第5回 ソリマチアキラさん(イラストレーター)

紳士服の世界で「Mr.クラシック」と呼ばれるジェレミー・ハケットが、1983年にスタートさせたハケット ロンドン。英国調のトレンドのなか、当連載では本物のモダン・ブリティッシュ・スタイルを標榜するこのブランドの魅力を、5回にわたってファッションや英国文化に造詣が深い識者たちが解き明かしていく。最終回は、ウェルドレッサーとしても知られるイラストレーター、ソリマチアキラさんが登場。

イラストレーターのソリマチアキラさん。

ドレスクロージングの世界に魅了されたきっかけを教えてください。

もともとのファッションの入り口は古着でした。高校卒業後、原宿の古着店で働いていたことがあり、そこでヴィンテージの魅力に目覚めました。カジュアル中心の店でしたが、“本物”といえるような欧米のヴィンテージに触れる機会が多く、そうした経験が今の自分のスタイルを形成するうえで大きな影響を及ぼしていると思います。50〜60年代の古着が好きで、アメリカものだとやっぱり、アイビーファッション。スーツやジャケットなどに興味をもったのもそのころでした。その後、本格的なスーツをつくりたいという気持ちが芽生え、20代の半ばくらいからヴィンテージをヒントにして、渋谷のテーラーでスーツをオーダーするようになりました。

取材時に着ていたのはオーダーメイドのグレーフランネルのスーツ。

アメリカものが全盛の時代ですよね。

1984年ごろの話ですが、当時はまだヨーロッパの古着を扱う店はあまりなかったと思います。アメリカのデニムパンツやレーヨンシャツ、スウェットシャツ、スタジアムジャンパー、ミリタリーものが中心でした。でも、なかにはコンディションのいいツイードのジャケットやマドラスチェックのシャツ、シアサッカーのサマージャケットなどもありました。ヨーロッパに目を向けるようになったのは、30代に入ってから。何着かスーツをオーダーするうちにオーセンティックな方向に惹かれるようになり、ごく自然にメンズファッションの本場である英国スタイルに行き着いたんです。

取材時に着ていたのは2014年に仕立てたという、グレーフランネルのスーツ。

どんなスーツをオーダーしたのですか?

最初につくった英国調のスーツは、映画007シリーズ第6作『女王陛下の007』(1969年公開)で、ジェームズ・ボンド役を演じたジョージ・レーゼンビーが着ていたガンクラブチェックのツイードスーツをイメージソースにしました。そのころから、スーツはほとんどがオーダーメイドです。既製品の場合、身長に合わせると身幅が合わないとか、いろいろと不便を感じることが多いので、最初からつくったほうがフィットするものができるんです。シャツも同じで、スーツと一緒にオーダーすることが多いですね。

古着からクラシックに目がいったのはなぜだったのでしょうか?

古着が好きになるという時点で、古いものへの憧れのようなものがあったんでしょう。高校生のときから、音楽も昔のジャジーなものとか、インテリアもアールデコとか、だいたい古いものに惹かれる性分でした。だから、クラシックなスタイルに興味をもったのも必然だったと感じています。ただ、クラシックなままだと舞台衣装みたいになってしまうので、そこにモダンさを加えたスタイルのほうが好みですね。今の時代の空気を取り入れるのは、非常に重要だと思います。トレンドカラーを意識することもあります。ただ、スーツはできるだけ普遍的なスタイルでつくることを心がけています。

英国スタイルへの憧れはありますか?

歴史的に見ても、英国はメンズファッションが花開いた国。そういった意味でも、源流はすべてそこにありますよね。現代でも、英国の洒落者たちのスタイルを見てみると、僕と共通するオールド感を好むようなところがあり、彼らの美意識にはとても共感します。あと、どこかにモダンな空気を入れたいという雰囲気が伝わってくるのも、僕の趣味とリンクする部分が多いと感じています。

こだわりが詰まったドレッシングルーム。

ハケット ロンドンにそういった英国的な雰囲気を感じますか?

昔、渋谷のテーラーでスーツをつくりはじめたときに、同じテーラーに来ていた顧客の人たちがよくハケット ロンドンの服を着ていました。1990年代前半の話ですが、それがすごく格好よくて、当時、青山にあったお店に見に行ったりしていました。ベルトやカフリンクスといった小物類もほかの店にはないようなものが揃っていて、非常に僕好みというか、独自の世界観に憧れた記憶があります。現在の話をすると、実際にロンドンを歩いてみても、懐古主義的な“ザ・英国スタイル”を見かける機会はほとんどないでしょう。ハケット ロンドンが提案するようなスタイルこそ、リアルだと思います。英国の伝統をベースとしながら、イタリアの素材を取り入れたり、最新のテクノロジーを取り入れたりと、常に“今の英国”を感じさせてくれるブランドだと思います。

こだわりが詰まったドレッシングルーム。

ジャケットにニットを合わせた着こなしがおすすめのスタイル。

スーツを着るときに心がけていることはありますか?

自分本位に着飾るというか、周囲から浮いてしまうようなスタイルはあまり好きではありません。それよりも、その日に訪れる街の風景に溶け込むようなスタイルを心がけています。イラストレーターという職業柄なのかもしれませんが、引いて一枚絵で見たときの周りの風景が気になるんですよ。その場所にいるのが自然に見えるというか、マッチしていると非常に格好よく映るんじゃないかという思いがあります。

ジャケットにニットを合わせた着こなしがおすすめのスタイル。

ところで、イラストレーターになったのは古着店勤務の後ですか?

いいえ。その後もいろんな仕事をしました。渋谷や銀座のバーで働いていたこともありますし、イラストレーターになる直前は、青山にあったクラブに勤務していました。そこは若いアーティストが個展を行えるギャラリースペースを併設していたり、夜中の12時までは壁にディスプレイした作品にスポットライトを当てたりと、わりとアートコンシャスな場所で、僕は展示に関するアートディレクターのような役割もしていました。面白いもので、その仕事がイラストの世界に足を踏み入れるきっかけになったんです。

イラストを描きはじめたのはいつごろからですか?

本格的に始めたのは22歳くらいからです。それまでは趣味というか、落書きのような絵を描いていました。ただ、クラブで働いているとイベントが定期的にあり、フライヤーを僕がつくっていたんです。そのクラブでは自分の個展も開催したのですが、当時そこで遊んでいた人たちのなかには、アートディレクターやデザイナー、アパレル関係者などが多く、イラストの仕事に結びつきやすい環境でした。つながりができた人たちから少しずつ仕事をいただいたり、グッズをつくらないかとか誘われたり、お声がけいただく機会が増えたので、クラブ勤務を辞めてイラスト一本でいくことにしました。それが24歳のときです。

イラストはどこで学んだのですか?

美大や専門学校に通っていたわけでなく、イラストレーターのアシスタント経験もありません。すべて我流です。イラストレーターになりたてのころは、50〜60年代に興味があったこともあり、昔のグラフィック年鑑や広告美術などの専門書を古本で買い漁っていました。教科書代わりというか、そういうものから影響を受けていましたね。はじめのころはグラフィカルな絵だったり、レトロなキャラクターみたいなものを描いたりしていました。わかりやすく言うと、柳原良平さんが描いたトリスウイスキーのマスコットキャラクターみたいな感じに憧れていましたね。フランスだとレイモン・サヴィニャックとか、初期のアンディ・ウォーホルも大好きでした。ああいう少しコミカルなんだけれど、格好いい雰囲気が、自分でも出せないかなと試行錯誤していた時期でしたね。

ハケット ロンドン 銀座の1階と2階をつなぐスペースにもジェレミー・ハケットお気に入りのアート作品が並ぶ。

ファッション関係の仕事はどのようにして多くなったのでしょう?

きっかけは、『エスクァイア日本版』編集部からファッションページのイラストを描いてほしいという依頼を受けたことでした。10代のころからファッションが好きだったので、非常にうれしかったですね。しかも、それを目にしたファッション関係者から“男の服をわかっている人が描いた絵だ”と認めていただけたのは、とても自信になりました。いつかファッションを描いてみたいという気持ちはありましたが、当時はまだ自分のスタイルが定まっておらず、いろいろ迷っていたころ。でも、この仕事がきっかけでファッションの仕事が増えていったんです。

メンズとウィメンズでは、どちらが好きですか?

描きやすいのは、圧倒的にメンズですね。自分のなかに知識があるので、すぐにイメージが湧きます。あと、僕はデッサンやクロッキーなど、正確な描写をする訓練をした経験がなく、どうやったら自己流の線が出せるのかを常に意識しながら描いています。だから、ファッションを描くときも、自分だけの線を引きたいという気持ちが強いんです。それはファッションも同じで、どこかに自分らしさを表現したい。自分の好きなファッションとイラストは、わりと共通点が多い気がします。

ハケット ロンドンのシャツを手に取り、Vゾーンのイメージを膨らませる。

スーツのディテールなどはどうやって決めるのですか?

お任せの場合は、今の気分を投影することが多いです。例えば、最近届いたオーダースーツみたいに描こうかなとか。今シーズン、トライしてみたいと思うスタイルをイラストで表すこともあります。自分の格好を無意識にイラストに反映させることもあれば、イラストを描いている最中にひらめくというか、次はこういうスーツをつくりたいというアイデアが浮かんだりすることあります。今日はハケット ロンドンのスタイルをじっくりと知ることができたので、今後のイラストにも影響が出るかもしれませんね(笑)。

今回のゲスト
  • ソリマチアキラ
    イラストレーター

    東京都出身。広告、装填、ウインドウディスプレイ、ロゴデザインなどを手がけるほか、国内外の雑誌などにも作品を寄稿。コミカルなタッチやファッションイラストレーションなど、幅広い画風で制作している。最近の仕事は、バーニーズ ニューヨークのクリスマスウインドウディスプレイや、SMBC信託銀行プレスティアのウェブCM、二重橋スクエアのオープンニングポスターなど。

ハケット ロンドンとは

紳士服の世界で「Mr.クラシック」と称されるジェレミー・ハケットが1983年にスタートさせた英国ブランド。創業者ジェレミーのサヴィル・ロウのテイラーで積んだ経験と、アンティークに対する情熱やセンスがコレクションに色濃く反映され、現代紳士のビジネスやカジュアルシーンを支えるブランドとして世界中から愛され続けている。また、2018年秋冬シーズンから、ストライプデパートメントでの取り扱いを開始。

旗艦店が銀座に

2016年にオープンした「ハケット ロンドン 銀座」は、英国リージェント・ストリートのストア同様にジョージアン様式をベースに、ポートベロー・ストリートで収集されたヴィンテージアイテムやアンティーク家具、装飾品が整然とディスプレイされ、チェルシー地区にあるジェレミーの邸宅を彷彿とさせる。オンとオフの紳士のためのワードローブが幅広く揃い、パーソナル テーラリング サービスも展開。

ハケット ロンドン 銀座

住所:東京都中央区銀座5-2-1 東急プラザ銀座1F
TEL:03-6264-5362
営業時間:11:00〜21:00 不定休

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