WHAT’S HACKETT LONDON?

5人の識者が語る
いま、気になる英国ブランド
“ハケット ロンドン”とは?
第2回 髙橋みどりさん(イメージングディレクター)

紳士服の世界で「Mr.クラシック」と呼ばれるジェレミー・ハケットが、1983年にスタートさせたハケット ロンドン。英国調のトレンドのなか、当連載では本物のモダン・ブリティッシュ・スタイルを標榜するこのブランドの魅力を、5回にわたってファッションや英国文化に造詣が深い識者が解き明かしていく。第2回は、イメージングディレクターの髙橋みどりさんが登場。

イメージングディレクターの髙橋みどりさん。

オンのワードローブを考えるうえでのアドバイスはありますか?

私はいつも「オンでも使えてオフにも使える服はない」と言っているんです。日本のファッション誌では「オン・オフ兼用にできるものを買おう」という提案が多いじゃないですか。それが間違っていると思うんです。まずは、オンで着る服と、オフで着る服を頭の中で切り分ける。そうすると服の買い方、ブランドの選び方、お店との付き合い方が変わってきます。なぜなら、オン(=仕事)というのは目的があるし、自分がやらないといけない役割もある。その日、何をするか、相手は誰か、どこに行くかが明確だから、それを考えて服を決めないといけないわけです。

上質なネクタイが並ぶ。正統派のネイビー無地は、トーンの違いで揃えるのもおすすめ。

確かに、日本の雑誌ではオン・オフ兼用といった特集は多いですよね。

一方、オフ(=休日)は自由なのでモードを着たいと思えばそれもいいし、今日はリラックスしたいという日には本当に楽なものでいい。自分のために服を選んでいい時間なんです。日本人は「オン・オフ兼用できる服を選べ」と刷り込まれてきたから、ワードローブを開けたときにぐちゃぐちゃになっている人が多いんでしょうね。だから、「何を着たらいいのか、何を買ったらいいのかわからない」「どこのお店に行けばいいんでしょう」となるんです。オン・オフ兼用なんて海外では聞いたことないですから。

上質なネクタイが並ぶ。正統派のネイビー無地は、トーンの違いで揃えるのもおすすめ。

では、オンとオフの服のどちらに比重を置けばいいのでしょう?

早く出世するためにも若いときは、オンの服に多く投資するべきでしょうね。オフの服は少し余裕ができてからでいいと思います。私はいつも「ファッションには人を幸せにしてくれる力がある」と言っているのですが、自分を高めてくれたり、応援してくれたりするものだと思うんです。だからこそ、仕事に一生懸命打ち込まないといけない時期は、背中を押してくれるスーツが必要です。あと、ファッションセミナーに登壇すると適正価格についてよく聞かれるのですが、ある男性向けセミナーのときに時計について質問されて、今までの私の経験をもとに「20代は20万円代の時計で十分だし、40代は40万円代かそれ以上。自分の年齢を基準に考えてみると、あまり外れないものに出合えます」と答えたら、すごく納得してくれました。こういうふうに数字で考えていくと、男性もものの買い方が理解しやすいみたいですね。

スーツの買い方だとどうでしょうか?

例えば、年収600万円の方は月給50万円ですよね。50万円の20%の約10万円のスーツが適正価格だと思います。それで、そのスーツに合わせるシャツは10万円の20〜25%。2万5000円前後のものを選びましょう。靴は10万円のスーツに対して50〜70%。5〜7万円くらいのものでコーディネートすると、「全身を見たときにどこも浮かない身の丈に合ったスタイルができます」とアドバイスしています。

そういう考えに至ったきっかけを教えてください。

エストネーションの立ち上げ前に、丸の内のビジネスマンが何を着て、いくらくらいのものを買っているのか、よく観察していたんです。そのときに、妙に高いものばかり身に着けている人や一点豪華主義的な人は、何だか浮いて見えるし賢く見えないんです。身の丈に合っていない格好悪さがある。あと、職場でファッションに関してどんな話をしているか調べてみたら、「大人になると、今までのお店じゃないところで買いたいよね」とか、「でも、ブランドものみたいな高いものはしょっちゅうは買えない」とか、話しているんです。それに加えて、「何を着ていいのかわからない」みたいな声が多くて。今日、こちらの『ハケット ロンドン 銀座』に来て感じたのですが、昔ながらのトラッドではなく、常にモダンに見えることを意識していると思うんです。だから、伝統を受け継ぐだけでなく、独自のセンスや審美眼を加えて、ずっと進化していけるでしょうね。大人の男性にふさわしいスタイル確立のための、心強い味方になってくれると思います。

経験に基づいているわけですね。

私が提案したその当時、スーツはウィメンズが7、8万〜10万円くらい、メンズが10〜12万円くらいがプライスの中心でした。つまり、年収600万円くらいのビジネスマンがターゲットだったのです。エストネーションは30歳以上の働く男女をテーマにしていたので、丸の内エリアの日本の上場企業で、年収が600万円になれば、係長になって、課長になって、どんどん出世していくだろうから、その初期段階でファンになってもらおうと。それがすごく当たったんです。若い子と同じものは着たくないと思っているけれど、何をどこで買えばいいのかわからない人にとって、あのころのエストネーションは手が届くプライスで、きちんと見えるものを提案してくれる便利なお店だったのでしょう。

ハケット ロンドンのスーツは12〜15万円くらいです。例えば、年収600万円の30代にとっては少し憧れのブランドでしょうか。

私の仮説だと少し奮発して、というところでしょうね。でも、15万円のスーツを着たら、会う相手が受ける印象が違ってくるし、自分の自信や気持ちも違ってきます。先ほど幸せになれると言ったのはそういう意味もあるのですが、自分が目指しているポジションに早くたどり着ける可能性が増すということなんです。“人は見た目が9割”というような言葉が一時すごく流行りましたが、ポジションが上がるといいスーツを着ようと思うし、いいバッグも持つだろうし、いい時計もしますよね。醸し出す雰囲気が変化すると同時に自分のスタイルが確立してくると思うんです。だから、出世したいのであれば、自己投資としても、そういうもの選びをすることが大事だと思います。

クラシックな傘は紳士の証し。英国紳士のようにステッキ感覚で持つのも愉しい。

ビジネスシーンでは控えめな装いというのも重要ですよね。

ハケット ロンドンもそうですが、英国ブランドにはそういうアンダーステートメントの精神が強く感じられます。日本は男性中心の社会が長かったので、仕事ができる人でもお洒落な印象を与えると、「チャラチャラしているんじゃないよ。格好ばかり気にしやがって」といった偏見が以前はあったと思うんです。また、ここ数年はイタリアものが全盛で、きれいな色のシャツやネクタイ、ポケットチーフが市民権を得たとは思いますが、それを理解できない社長が日本の大企業にはまだ多くいます。そういう方と仕事でお目にかかるときには、礼節を重んじる英国的な服が最適だと思います。

これからのホリデーシーズンについてアドバイスをお願いします。

ソックスは圧巻の品揃え。休日のオフシーンなら、柄物を選んで着こなしのアクセントに。

男性は女性と出かけるときに、目立ち過ぎてはいけないことを自覚してほしいんです。自分は引き立てる側だということを忘れている男性が多いですよね。例えば、休日のカップルの装いを見てみると、すごくチグハグだったり、世界観がまったく違っていたりします。そんな人たちが旅先やパーティーで素敵に見えることはありません。でも、テイストや色を揃えるだけで、ふたりでいることがすごく自然に見える。「今日、私はこれを着たいから、あなたもこんな格好にしてね」とか、会話をしながらお互いにお洒落を楽しむことができれば見違えるはずです。一緒にいて素敵に見えれば、ホテルに行っても、レストランに行っても扱いが変わってくるし、席が良くなることもあると思います。

ソックスは圧巻の品揃え。休日のオフシーンなら、柄物を選んで着こなしのアクセントに。

男性が目立ち過ぎるのは良くないという話は、英国紳士の考え方に通じますね。

さっき店内を見ていて思ったのですが、イタリアものと違って英国ものは背筋の伸びた紳士をイメージさせますね。その横に、私たち女性はきれいな色のエレガントなワンピースを着て並びたいという気持ちになりました。すごく誠実で、知的な男の人のそばにはデニムでは並びたくない、と言えばいいのかな。英国の服には、そういう歴史の重さやその人の背景を感じる強さがあると思うのです。着こなしも、昔は基本があったうえでくずしていいというルールでしたが、今は最初から何でもありでしょう。人によってはハケット ロンドンのことを堅苦しそうだと感じる方もいるかもしれませんが、メンズファッションの源流である英国スタイルを理解して、上手に着こなせるようになれば、年齢を重ねてもいくらでも素敵になれると思うんです。

最後に、ファッションにおけるEコマースとの賢い付き合い方を教えてください。

このお店に来ると、まるでロンドンにいるみたいですよね。そういう背景や世界観を知ったうえで、自分だったらどう着るかまで落とし込んでいくのが大人の楽しみなんじゃないでしょうか。Eコマースで買うにしても、まずは一度、実店舗に足を運んでみたほうがいいと思います。それからオンラインで買い足していくほうが、効率的でありながら服の面白みや奥深さも学べると思うんです。みんな格好いいものを身に着けたいと思っているけれど、その格好良さは人それぞれで違います。その加減は、お店での接客を経験しないとつかめませんから。

次回は、長谷川喜美さん(ジャーナリスト)が登場!

今回のゲスト
  • 髙橋みどり/タカハシミドリ
    Oens代表 兼 イメージングディレクター

    1990年のバーニーズ ニューヨーク日本進出に伴い、バーニーズ ジャパン宣伝部ジェネラルマネージャーに就任。その後ジョルジオ アルマーニ ジャパン広報室長を経て、2000年にエストネーションを立ち上げる。05年に独立し、Oensを設立。PR・マーケティング業をこなす傍ら、働く女性を応援するブランドや化粧品などのプロデュースに力を注ぎ、講演・セミナーにも登壇するなど、活躍の場を広げている。『大人のおしゃれのルール FASHON RULE BOOK』(講談社)、『デキる男のお洒落の極意』(講談社)など著書多数。

ハケット ロンドンとは

紳士服の世界で「Mr.クラシック」と称されるジェレミー・ハケットが1983年にスタートさせた英国ブランド。創業者ジェレミーのサヴィル・ロウのテイラーで積んだ経験と、アンティークに対する情熱やセンスがコレクションに色濃く反映され、現代紳士のビジネスやカジュアルシーンを支えるブランドとして世界中から愛され続けている。また、2018年秋冬シーズンから、ストライプデパートメントでの取り扱いを開始。

旗艦店が銀座に

2016年にオープンした「ハケット ロンドン 銀座」は、英国リージェント・ストリートのストア同様にジョージアン様式をベースに、ポートベロー・ストリートで収集されたヴィンテージアイテムやアンティーク家具、装飾品が整然とディスプレイされ、チェルシー地区にあるジェレミーの邸宅を彷彿とさせる。オンとオフの紳士のためのワードローブが幅広く揃い、パーソナル テーラリング サービスも展開。

ハケット ロンドン 銀座

住所:東京都中央区銀座5-2-1 東急プラザ銀座1F
TEL:03-6264-5362
営業時間:11:00〜21:00 不定休

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