WHAT’S HACKETT LONDON?

5人の識者が語る
いま、気になる英国ブランド
“ハケット ロンドン”とは?
第1回 森岡 弘さん(ファッションディレクター)

紳士服の世界で「Mr.クラシック」と呼ばれるジェレミー・ハケットが、1983年にスタートさせたハケット ロンドン。英国調のトレンドのなか、本物のモダン・ブリティッシュ・スタイルを体現するこのブランドの魅力を、5回にわたってファッションや英国文化に造詣が深い識者たちが解き明かしていく。第1回は、ファッションディレクターの森岡 弘さんが登場。

ファッションディレクターの森岡 弘さん。ハケット ロンドン 銀座のストア内にて。

森岡さんにとって、ファッションの面白みとは?

ふたつあって、僕はさまようこと、失敗することも楽しいと思うんです。でも、ひと通りそういう経験をして、ある一定の年齢に差しかかったら、自分のスタイルを確立するほうに目を向けるべきでしょう。というのも、30代ぐらいになると、世の中に対しても、仕事に対しても、ある程度、責任感が必要になりますよね。オフの日は別として、オンのスーツではあまり間違った着こなしをしてほしくないんです。

そうすると、トレンドとの付き合い方も変わってきますね。

たとえスリムなスーツがトレンドでも、大人の男は自分のキャリアにふさわしい安心感や落ち着き、信頼感のある着こなしを心がけるべきです。仕事着でいちばん大切なのは、スマートな印象。ファッショナブルに見えるより、物事がわかっている人、仕事ができそうな人に見えたほうがいい。そのためにも、オンの服はあくまでも自己演出のためのツールと捉えるのが賢明です。だから、自分にとって必要なものを探すことを面白がれたらとても楽しいし、間違えると“なんだ、あいつ”となる。ただ、いまは選択肢がありすぎて、迷ってしまう人が多いみたいですね。そんなときは、ハケット ロンドンのようなブランドを選択肢のひとつに入れておくといいでしょう。

ハケット ロンドンにはどんな印象をお持ちですか?

創業者のジェレミー・ハケットさんはサヴィル・ロウのテイラー出身。男の服を理解して、体現している人がつくる服だから、リアリティがありますよね。英国の正統派のクラシックを踏襲しながらも、常に目新しい発見がある。僕が『MEN’S CLUB』編集部に在籍していた当時は、ほかにそういうブランドがなかったんです。自分のなかでは、ルールにがんじがらめになっていた頭を解きほぐしてくれたというか、トラッドがベースだけれども、“そればかりじゃないんだよ。もっと装いを楽しもうよ”と教えてくれた、何人かのうちのひとりがジェレミーさんでした。

クルーネックニットにネッカチーフを合わせて。ストア内には、参考になる洒脱なコーディネートが並ぶ。

英国人の気質なのかもしれませんが、ハケット ロンドンの服にはユーモアやウィットがありますよね?

ジェレミーさんがアンティークやヴィンテージの服が好きなこともあってか、そこからインスピレーションを得たようなチャーミングな服が多いですよね。でも、全体として見ればクールだし、安心感もある。ファッションが苦手という人でも、わからないなりに、気になるものを組み合わせるだけで、余裕とか、洒落っ気とか、ユーモアなどが演出できると思いますよ。

クルーネックニットにネッカチーフを合わせて。ストア内には、参考になる洒脱なコーディネートが並ぶ。

英国の伝統スタイルを熟知しているからなのでしょうね。

スタイルにブレがないから、徐々に買い足していくだけでも2年後、3年後のワードローブが管理しやすくなると思います。少なくとも、去年買ったものが着られないとか、どうコーディネートしていいかわからないといった悩みからは解放される。いまハケット ロンドン 銀座の店頭に出ている服も、20年前のコレクションと合わせられそうですからね。それにハケット ロンドンの場合は、昔ながらのトラッドではなく、常にモダンに見えることを意識していると思うんです。だから、伝統を受け継ぐだけでなく、独自のセンスや審美眼を加えて、ずっと進化していけるでしょうね。大人の男性にふさわしいスタイル確立のための、心強い味方になってくれると思いますよ。

スタイルづくりのためのコツはありますか?

間違っていない着こなしのなかに、どう自分らしさを取り込んでいくかがカギになります。ネクタイの柄を少し大きくするとか、色使いを少しだけ遊んでみるとか、スーツ、シャツ、ネクタイのなかのひとつをヒネってみるのもいいでしょう。あとは、自分だけのこだわりを持つのも手ですよね。たとえば、スーツはネイビーしか着ないとか。毎日、ネイビーなんだけれど、実は色合いや素材感が少し違っていたり。同じような着こなしなのに、実はよく見ると違うスーツだったとか。気づかない人もいるけれど、気づく人はすぐに気づくと思うんです。そういう密やかな企みのような、楽しめるものがあると、それがだんだん自分のスタイルになっていくと思いますよ。

ハケット ロンドン 銀座は天井が高く、広々とした空間が広がる。森岡さんも最新のコレクションを隈なくチェック。

森岡さんがそういう考えに至ったのはなぜですか?

数年前から政財界の人たちのスタイリングをしているのですが、彼らは立場が上になるほど、服装で大切なのは他者への配慮だと言います。でも、その配慮を着こなしに落とし込みすぎると普通になってしまう。特に服好きだと、普通は楽しくないからグレーゾーンで遊びたくなるようですね。だから、ドレスコードを知ったうえで、曖昧な部分を攻める。僕も年齢を重ねるにつれて、それが面白いと感じるようになりました。これ見よがしな着こなしの楽しさではなくて、ほくそ笑む悦びというか(笑)。そういう部分は、ハケット ロンドンにも共通していますよね。

とはいえ、職業柄、たくさんのトレンドに接しますよね。

僕も昔はトレンドを追いかけたりしましたが、以前はファッション関係者のなかでの仕事が中心だったので、それでも通用しました。でも、まったく違う業界の人たちと接するときに、あまりに相手と乖離した格好だと理解してもらえないし、不安を抱かせてしまいます。また、逆に普通すぎると“この人で大丈夫かな”となる。そのサジ加減を考えはじめたのが、いまのスタイルに行き着いたきっかけでした。だから、自分のスタイルとはいっても、相手によって少しずつ変えています。それで、プレゼンするときに「こんな感じはどうですか?」と言うんです。仕事のやり方を変えて、自分の格好も提案材料のひとつにするようにしたら、自然とファッションも変わりました。

ところで、昨今の英国調ブームをどう見ていますか?

僕はガチガチのトラッドを提案していた時代の『MEN’S CLUB』を経験した反動もあって、コスプレに見えるような格好には拒否反応があるんです(笑)。厳格なルールに則って、いつも同じ装いをするのもいいとは思いますが、個人的にはなにかベースになるスタイルがあったうえで、そこに自分なりの感覚を取り入れていくほうが好きですね。それに、いまや国でスタイルを分類するのもナンセンスでしょう。昔は、先輩から「パンツの裾上げは3.5センチのダブルじゃないとダメ」とかよく言われましたよ。4.5センチにしたらルール違反みたいな。でも、その枠組みから飛び出すのが楽しかったりしますから。だから、英国調のブームにしても、あえて定石に縛られないほうがいいと思いますが、その加減を知らないと難しいかもしれませんね。

袖口にボタンを4つあしらい間隔を開けて留めるのは、近衛兵の軍服に倣った仕様。ていねいな縫製も光る。

遊び心はどう表現すればいいのでしょうか?

スーツにボタンダウンシャツを合わせるのは、本来のルール上はNGですよね。でも、“あいつが着ていれば、ありに見えない?”というのがファッションの面白さのひとつだと思うんですよ。ただ、“あいつは、ちゃんとしたときボタンダウンは合わせないよね”みたいな。基本のドレスコードはわかっていて、遊ぶしなやかさももっている人はセンスがよく見えます。ジェレミーさん自身も、ジャケットにジーンズのコーディネートがいまみたいにポピュラーになるずっと以前からそういう格好をしていましたし、スタンダードな服をどう遊ぶと楽しいかを実践してきた人だから、提案するスタイルに説得力がありますよね。

袖口にボタンを4つあしらい、間隔を開けて留めるのは英国流儀のクラシックな仕様。ていねいな縫製も光る。

森岡さんだったら、英国調の服をどう着こなしますか?

英国のカントリースタイルには、オフシーンのファッションのベースになるような服がたくさんあります。ああいう服をベースにして、シルエットをいまふうに変化させたものを選んだり、ドレスクロージングと合わせてみたりするのが面白いのではないでしょうか。ただ、個人的には、わかりやすく他人に伝わるような遊び方より、知っている人が見たときに“こいつ、なかなかやるな”と思わせるような着こなしのほうが楽しそうな気がします。たとえば、チェック柄も従来にないような色合わせや柄の大きさを探すとか、ジャケットの上からダウンヴェストを着てみるとかね。基本のコーディネートを、少しだけハズしてみるのが新鮮だと思いますよ。

次回は、髙橋みどりさん(Oens代表兼イメージングディレクター)が登場!

今回のゲスト
  • 森岡 弘/モリオカ ヒロシ

    ファッションディレクター/スタイリスト
    早稲田大学卒業。婦人画報社(現ハースト婦人画報社)を経て、クリエイティブオフィス「株式会社グローブ」設立。雑誌や広告のファッションディレクションおよびスタイリングを中心に、俳優やミュージシャン、スポーツ選手、政治家などのスタイリング、企業のユニホームデザイン、イメージコンサルティングなど、幅広い分野で活躍。トークショーや講演・セミナーなども行う。『男のお洒落の方程式 たかが見た目で損をしない』(講談社)、『知って納得 新・スーツの鉄則』(NHK出版)など著書多数。

ハケット ロンドンとは

紳士服の世界で「Mr.クラシック」と称されるジェレミー・ハケットが1983年にスタートさせた英国ブランド。創業者ジェレミーのサヴィル・ロウのテイラーで積んだ経験と、アンティークに対する情熱やセンスがコレクションに色濃く反映され、現代紳士のビジネスやカジュアルシーンを支えるブランドとして世界中から愛され続けている。また、2018年秋冬シーズンから、ストライプデパートメントでの取り扱いを開始。

旗艦店が銀座に

2016年にオープンした「ハケット ロンドン 銀座」は、英国リージェント・ストリートのストア同様にジョージアン様式をベースに、ポートベロー・ストリートで収集されたヴィンテージアイテムやアンティーク家具、装飾品が整然とディスプレイされ、チェルシー地区にあるジェレミーの邸宅を彷彿とさせる。オンとオフの紳士のためのワードローブが幅広く揃い、パーソナル テーラリング サービスも展開。

ハケット ロンドン 銀座

住所:東京都中央区銀座5-2-1 東急プラザ銀座1F
TEL:03-6264-5362
営業時間:11:00〜21:00 不定休

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