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Editorial / December 2021

素肌と素材

写真/ 藤田由香
取材協力/ 山藤陽子 (partiality store by YORK.)




40代に差し掛かる頃から、直に素肌に触れる素材は天然素材が良いと感じるようになる──そういった声をよく聞く。
20代の頃はポリエステル製のパンティを好んで穿いていたのに。
これは、皮膚感覚が変わることに起因しており、年齢が上がるにつれて皮脂分泌量が減るバリア機能低下や、女性ホルモン減少による乾燥から違和感を感じ始める。
人は気づかぬうちに、身体が求めるものを感知して従っているもので、喉が渇いているから水が飲みたい。機能が低下しているところを補うようにフルーツ、チョコレート、白米が食べたいと、様々なものをピンポイントで食べたくなる。
頭で考えるよりも身体のほうがずっと賢いんだなと、ふと考えさせられる。


partiality store by YORK.を手がける
山藤陽子さんが語る

素材への偏愛が生まれるとき

大人になるほど、肌感覚は豊かになる

「若いときって、自分が発するエネルギーが強いから素材の良さを受け取りにくくて、化繊の下着でも大丈夫だし、むしろデザイン性の高いもののほうがいいと思っている気がします。私自身もそうでしたし。
シルクやカシミヤのような上質な素材は20代にはまだ買えないし、大人になって余裕ができたら身に着けられるものだなと。
実際に大人になってみると、自分が発するエネルギーが弱まることで、代わりに受け取るスペースが広くなるものなんだなと感じました。
大人になればなるほど、肌感覚の感受性が豊かになるんじゃないかなと。
味覚や嗅覚も一緒で。出汁からお味噌汁を作るようになるとインスタントでは物足りなくなるし、最近主流のオーガニックコスメに触れる機会が増えると、天然の香りと人工の香りの違いが自然とわかるようになる。
人間には、自然のものを受け取る力がそもそも備わっているんだなと感じます」

── 素材と素肌 ──

SILK

シルクは贅沢であるという満足感

「シルクには天然素材のすごみを感じるんですよね。
保湿作用もあるし、UV効果もあってお肌を優しく守ってくれる。
シルクが故のラグジュアリーな感じは、自分がすごく贅沢なものをちゃんと身につけているぞという満足感を肌感で得られるところもありますよね」

「例えば、部屋着にシルクを着ているのと、ヨレヨレのトレーナーを着ているのとでは、所作も変わると思うんですよ(笑)。
シルクならば布地の柔らかな動きが目に入ったり、ずっと肌に触れている感覚が気持ちを変えるから。自分を見せる場所ではないところでも身に着けることが、私は大事なんじゃないかなと思っています」

── 素材と素肌 ──

ORGANIC COTTON

オーガニックコットン=元気な植物

「オーガニックコットンは、農薬を使っていない有機野菜と一緒で植物自体が元気ですよね。 天然の油分がたくさん含まれていて、洗濯しても繊維に弾力性があって、肌触りが優しい。素材そのものが元気だから気持ちいい。
コットンは、実ができて、中に綿ができて、全部枯れたところで綿だけを収穫するのが効率的な生産方法なので、農薬を使って育てている生産者は、収穫時期を早めるために枯葉剤を撒く。そうすることで、土地も枯れていくし、作物もできにくくなる、地球の水も汚れる、作業に携わる人たちの健康被害につながる……という悪い循環に陥ってしまう。
生産に手のかかるオーガニックコットンのTシャツが普通のTシャツよりも500円高くても、買われることでビジネスとして潤い、守られ、循環する。育てる人も気持ちいい、地球も気持ちいい、着ている私達も気持ちいい──となりたいですね」

「今私が履いている靴下は、私の人生の中でも最高のソックスだな! と思っています。本当に気持ちいいんですよ。
ヤクウールは稀少性が高い素材なんですが、スーピマコットンとブレンドすることで、保温性・吸湿性・滑らかなタッチの相乗効果が生まれる。それがとっても絶妙で。私、ソックスを履いて気持ちいいと感じたことがなかったから、衝撃を受けました」

── 素材と素肌 ──

BAMBOO RAYON

予想以上にしなやかな、バンブーレーヨン

「オーストラリアのブランド『Boody(ブーディ)』のバンブーレーヨンは、値段がカジュアルでデザイン性もすごくよかったので、取り寄せて自分でしばらく試してみました。
レーヨンだから、ちょっと化繊に近い肌感覚で洗濯に弱いのかな……と思っていたんですけれど、使ってみると全く違いました。
滑らかで肌にフィットするし、薄手なのにすごく丈夫。洗濯にも全然耐えうるし。
すぐにヨレヨレしちゃうとみずほらしくなりますよね。つい、もったいなくて着ちゃったりしますけど、ヨレヨレを着ている自分というものに上がらない。部屋着と下着は、ちょっとヨレた時点でもう絶対人には見せられなくなるというか、いや、誰にも見せないんですけれど(笑)」

「今日穿いているのは、『Boody』のフルレギンス。
いつも穿いているのに、毛玉にもならないし、ヘタレない。
私はわざと大きめのサイズを選んで、かかとまで包む。その上にソックスを履くとあったかくて最高です」

/ PROFILEプロフィール

山藤陽子

YORK.代表/ ライフスタイルコーディネーター/ SCENT Designer

やまふじ・ようこ
気持ちいいことをテーマに、セレクト、ブランドコンサルティング、商品企画開発、パフューマーとしてフレグランスや舞台など、空間演出としての調香も手がける。2015年、南青山にコンセプトストア「HEIGHTS」をオープン。オリジナルのシルクのラウンジウェアやパフュームなど、独自の偏愛の幅を広げている。

「“心地よい揺らぎ感と意外性”というのが私の人生のテーマ。当たり前にいいものを当たり前にいいねというだけではなく、ちっちゃい驚きが人生には大切。体温が一度上がるようなワクワク感を感じるようなものを紹介したいなと思っています」