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LIVING / 13 MARCH , 2020
春の味がクラスアップする
白い器

フードコーディネート / 中川たま
写真 / 宮濱祐美子

新しい季節の始まりを告げる春の食材。料理の彩りも豊かになり、味だけでなく見た目も旨味の一つとなる。そんな春の料理の魅力をぐっと引き立てるのは、シンプルだからこそニュアンスや形で料理の表情も変わる“白い器”。ここでは、白い器好きとしても知られる料理家・中川たまさんが作り出す料理と、一日に寄り添う白い器のストーリーをお届けする。

「 朝 」

心地よい春の朝の目覚め。慌ただしく家族を送り出したあとは、独りのゆっくりとした時間が流れ始める。まだ働き始めていない体内は、春の味が凝縮したいちごのガスパチョで優しく起こす。

少し緊張感のある白の器と、華やかで愛らしいいちご色が相まって、洗練された食卓に心も優雅になる。こうして一日のはじまりが整う。

「 昼 」

陽気な春の暖かさに包まれたお昼の時間は、太陽の恩恵を受けた食材たちのボリューム満点なワンプレートごはんで、午後の元気をパワーチャージしたい。迫力ある白い大皿に、力強い春の緑色を盛り付ければ、私の活力の源に。

「 おやつ 」

おやつの時間は、仲間と会話に花を咲かせながら、甘味で気分をリフレッシュする大切なご褒美だ。眺めているだけで”ふふっ”と笑みが溢れそうな、可憐なスイーツと繊細な白い器のハーモニーに心を踊らせて。

「 夜 」

日が暮れ始める頃、家では気の置けない仲間との大人な集まりがスタートする。美しくも儚げな春の夕刻を感じながら、仲間と楽しむ晩酌以上に美味いものってあるのだろうか。

つい手が伸びてしまうオードブルにメインのご馳走、卓上に控えめに佇む白の器たちが、会話を盛り上げてくれるよう。笑い声が絶えない幸せなひとときを共有しながら、今日もまた一日が終わる。

「料理家・中川たまさんと、白い器」

中川さんのお家の食器棚には、大中小のさまざまな形とニュアンスの白い器が並ぶ。
緊張感を保ちつつもどこか暖かみもある白い器たちと、旬の素材を生かした美しい料理とのコラボレーションは、うっとりするほど素敵だった。

「器は基本的に洋食器はアンティーク、和食器は作家物が多いです。長く付き合えるもの、うちにある他の器と調和できるものを選びますが、アンティークなどは同じものがなかな見つからないので、出会ったら直感で購入します」(中川さん)

料理に合わせて、ぱぱっと食器棚からそれぞれの料理に合う器を取り出す姿は、手際が良くて格好が良い。そして、器の上では中川さん自身が持つ美的感覚が光る。

「料理を盛り付ける時は、美味しく見えるのが前提ですが、余白のバランスなどを気にしながら白いキャンバスに絵を描くつもりで楽しみます」(中川さん)

ただ単に料理を器に乗せるのではなく、器とのバランスを考えながらアートのように盛り付けも楽しむ。だからこそ、中川さんの料理はいつだって洗練されていて、たくさんの人を魅了するのだろう。

/ PROFILEプロフィール

中川たま

料理家

自然食品店勤務後、ケータリングユニット「にぎにぎ」を経て、2008年に独立。旬の食材を生かしたレシピや、洗練されたスタイリングを書籍や雑誌などで提案している。地元・逗子を拠点にイベントにも精力的に参加し、ジャムなどの保存食を提供するほか、季節のエッセンスを加えた手仕事に日々勤しむ。著書に『デイリーストック 朝、昼、晩 日々の料理の味方』(グラフィック社)、『歴の手仕事』(日本文芸社)などがある。
2020年6月中旬には、家の光協会より器の本(タイトル未定)の出版を控えている。