BRAND STORY

010 ウジョー

Ujoh

国内をはじめ、世界のファッションシーンを牽引する人気ブランドの原点から未来のヴィジョンまで、ブランドのアイデンティティをストデパらしく紐解く『BRAND STORY』。連載第10回目は『Ujoh』デザイナー西崎 暢さんにブランドの軌跡と2019年春夏コレクションについて伺いました。

運命的なタイミングで
ファッション業界へ進む

マニッシュで洗練されたムードの独創的なコレクションで着る人の個性を際立たせてくれる『Ujoh』。デザイナーの西崎 暢さんは、専門学校を卒業後、『Y’s』や『Yohji Yamamoto』のパタンナーとして7年間就業。その後、独立して2009年に『Ujoh』をスタートし、現在では世界中から注目されるブランドへと成長を遂げた。そんな輝かしい経歴を持つ西崎さんは、意外なことに、専門学校を卒業後、就職のことは後回しにして海外へ旅に出かけるつもりだったそう。
「周りが就職活動や練習に励んでいる時に僕は全部放棄して、バックパッカーで旅に出ようと思っていました。ユースホステルの会員になって、あとはチケットをおさえるだけというタイミングで、『Yohji Yamamoto』でパタンナーの募集があることを知り、引き寄せられるように応募して、すごくラッキーなことに入社することができました。メンズの部署のパタンナーとして働き始めたのですが、トワルチェックもシーチングではなく実際の生地で縫うし、巨大なアトリエにそれが数百体も整然と並んでいて、とにかく凄かった。きっかけは運命的な感じでしたが、そこからは、しっかり経験を積ませていただきました」

入社後は先輩の指導を受けながら、シャツのパターン引きから始まり、ボトム、アウター、ジャケットといった具合に徐々に関わらせてもらえるアイテムが増えていく。そうして、時間をかけて全アイテムを自分の技術として触れるようになった後に、次のステップへと進む。
「独立した頃は営業のこともプレスのことも何も分からなくて、最初は苦戦しました。パタンナーで勤めていた時は、机でパターンを引くか、ミシンを踏んで縫うかの往復で外部との接点が全然なかったんです。ただ、工場とはやりとりしていたので、モノだけは作れるんだけどみたいな感じで。それで、『PLUG IN』が数シーズンだけ開催していた、厳選したデザイナーに向けた合同展示会『LUXE by PLUG IN』に参加したことがきっかけで、お取引先の目に留まり、今に繋がっていると思います」

プレスルームにて。ミラノコレクションを控えた慌ただしい時期にもかかわらず、笑顔でコレクションの説明をしてくださったデザイナーの西崎 暢さん。

絶大な影響力を持つ、サラ・マイノさんとの出会い

2014年春夏から東京コレクションに参加するようになり、パタンナー出身のデザイナーならではの高度なパターンテクニックとダイナミック且つエレガントなカッティング、そしてブランドの世界観を動きのあるショーという形で効果的に発信していった。その後、数シーズンが過ぎた頃、新たな転機が訪れる。
「好きなことをやりたくて独立したはずなのに、気づくと何かフラストレーションが溜まっていた時期があり、周りのことを気にせず、好き勝手にモノ作りをしようと吹っ切って発表したのが、2015年秋冬コレクションだったんです。ちょうど、その時の東コレにインフルエンサーとして『VOUGE ITALIA』のSara Maino(サラ・マイノ) さんが来日していて、印象に残ったブランドのリストに『Ujoh』を挙げてもらえたんです」
それ以降、サラ・マイノさんからダイレクトにアドバイスをもらうようになったという。

「例えば、ドバイで『VOUGE ITALIA』と『エミレーツ航空』が主催の若手発掘コンテストがあるから申し込みなさいと言われ、当時、目先のことでいっぱいいっぱいではありましたが、チャレンジしたことで結果的にファイナリストとしてドバイでの最終審査に進むことができました。それ以外にもミラノファッションウィーク主催の『FASHION HAB MARKET』という、若手のデザイナーをフィーチャーした展示会に私の推薦枠があるから出なさいと言われたり、グイグイと引き寄せられるように参加しました」
ドバイで賞は獲れなかったものの、次にジョルジオ・アルマーニ氏が若手デザイナーをサポートしているプログラムの話をもらうことになる。
「サラ・マイノさんから、決めるのはアルマーニさんだけど私はそのテーブルにのせる手助けはできる。ショーをするにはお金もかかるし、やる気があってそれが大丈夫ならプロダクションもPRも全部手配すると言われ、もちろんやりますと返事しました」
そして、ミラノファッションウィーク期間中に『ARMANI/TEATRO』で、『Ujoh』2016年秋冬コレクションを発表したことで、一気に世界中の注目を浴びた。

上品で女性らしいフレンチスリーブのプルオーバーブラウス。ゆったりとしたシルエットにストライプを効かせることでスッキリとした印象に。サファリテイストのフラップポケットがポイント。 ブラウス 32,000円/Ujoh

胸元のフラップポケットがアクセントになった、ミリタリーテイストのラップドレス。ウエストをさりげなくマークすることでエレガントな着こなしができる。 ドレス 48,000円/Ujoh

リラックスしたテーラードスタイルをドレープ感のある素材で表現。ウエストのドローコードや袖ロールアップベルトでお好みのスタイリングが可能。 ジャケット 49,000円/Ujoh

女性らしく華奢な印象を与えるよう計算されたドロップショルダーとカットオフされた袖がポイントのロング丈カットソー。程よいラフさと上品さを演出できる。 ドレス 25,000円/ともにUjoh

ギャザーの膨らみが女性らしいマキシ丈スカート。ウエストはゴムとヒモの仕様でトップスをインするスタイリングもできる。『Ujoh』オリジナルのストライプ柄。 スカート 39,000円/Ujoh

フロントの裾辺りに付けられたドローコードがアクセントになった、シンプルなデザインのカットソー。ギャザーの寄せ方でシルエットに表情を出すことができる。 Tシャツ 23,000円/すべてUjoh

テーラードスタイルを軸にしたエレガントなコレクション

ミラノファッションウィークで発表された2019年春夏コレクションでは、“現代を生きる女性たち向けたテーラードスタイル”を提案。
テーラードスタイルに欠かせないジャケットは、春夏らしい軽やかさと、バランス感がありながら、どれも既存のスタイルのものはなく、大胆にそぎ落としたり足したりと、変形作業を繰り返すことで新しいジャケットとエレガントなスタイルを構築している。その他、ミリタリーなディテールを取り入れたデザインのラップドレス、アシンメトリーなスカート、抜け感のあるカットソーなど、どれも『Ujoh』ならではのパターンテクニックで表現しながら、上品な印象に仕上げている。
「ドレープ感があって風をはらむ動きが特徴の素材を使ったドロップショルダージャケットや、ウェーブ感を出すために柔らかいコットンを使った分量感のあるスカートなど、『Ujoh』らしいエレガントさと構築的なパターンの面白さが伝わるような適した素材で表現しています」
ハリのあるキャンバス地、こしのあるウールギャバジン、しなやかで肌触りの良いコットンボイルなど、様々な素材で展開されるバリエーション豊かなコレクション。制作の進め方としては、やりたいこと、作りたいものが基本になるという。
「言葉でテーマを考える作業というよりは、こういうアプローチはやりたいなとか、一方でこういう生地が気になっているなど、やりたい雰囲気のものを軸としてどんどんアイディアを出していきます。インスパイアされることはあまりないのですが、最近、『ENCENS』という海外のファッション誌を見て、企画段階で漠然と頭に浮かんだことを掴めることがあります。ただ、基本的にはオリジナルの素材を尾州などで作り込んだり、集めたりしながら、企画を進めていくことが多いですね」

そして、溢れ出したクリエーションをまとめる最終段階では超人的なスピード感でデザインとパターンを上げていく。
「例えば、ショーの2ヶ月前くらいにデザインが決まり始めるのですが、そこから1コレクションのパターンのベースを2週間程度で作ることもあります。それぐらい爆発的にギュッとモノを作るやり方なんです」
鍛え上げられたスキルと集中力で完成されたコレクションは、毎シーズン海外でも高い評価を得ている。インターナショナルブランドとなった『Ujoh』の今後について、最後に少しだけ伺った。
「来シーズンでブランド設立10周年になりますので、新しいことをやろうと思って、ロゴを新しくしてメンズもスタートする予定です。それと、3年前の『ARMANI/TEATRO』でのショーの記事を見てくださった『サルダリーニ』社からオファーをいただいて、『カシミヤフレークス』という『サルダリーニ』社が開発した素材を使ったカプセルコレクションも発表予定です」

前面に大きなタックが入ったワイドパンツ。ベルトをハトメに通して好みのフィット感に調節可能。独特なハリ感のある素材で美しいシルエットがキープされている。 パンツ 39,000円/Ujoh

スタイルがアレンジできるような仕組みとして、左裾側にドローコードを通したアシンメトリーなデザインのスカート。ギャザーの寄せ方で表情を変えることができる。 スカート 45,000円/Ujoh

コレクションを作るためのインスピレーション源は特にないという西崎さん。強いて挙げるなら、パリコレの時期に出版される海外ファッション誌『ENCENS』。「綺麗な本だなと思って、毎シーズン出張中に買うことが多いですね。今の新しい服もヴィンテージも載っていて、それをうまくミックスさせてスタイリングしている感じがなんか好きなんです」

/ INTRODUCING BRANDブランド紹介

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ウジョー

デザイナー西崎 暢(ニシザキ ミツル)。東京モード学園卒業後、『Y’s』、『Yohji Yamamoto』のパタンナーとして7年間勤務。2009年『Ujoh』(ウジョー)を設立し、2014年春夏コレクションより東京コレクションに参加する。2015年には、ミラノファッションウィーク主催の若手デザイナーをフィーチャーした展示会 『FASHION HAB MARKET』に招聘され出展。同年、ドバイで『VOGUE ITALIA』が主催するスカウトコンテスト『Who is on next? Dubai 』にファイナリストとして招聘され参加する。2016年にはジョルジオ・アルマーニ氏が若手デザイナーをサポートするプログラムの支援を受け、ミラノファッションウィーク期間に『ARMANI/TEATRO』でショーを開催。2018年春夏コレクションより、ミラノファッションウィークにてコレクションを発表している。